孫正義のビジョンとソフトバンクワールド2024の背景
ソフトバンクワールド2024は、毎年恒例のイベントであり、テクノロジーの未来について孫正義が語る特別な場です。今回のソフトバンクワールドで孫氏が語ったのは、まさに人類とAIの未来に関わる壮大なビジョンでした。彼は、このイベントを通じて、自らが強く信じている「超知性(ASI)」の到来と、その社会的影響について深く掘り下げて語りました。
AGIとは、人間の知能と同等のレベルに達することを意味するとされています。
そしてASIとは、AGI(汎用人工知能)がさらに進化し、1万倍の超知能が超知性に進化することです。超知能とは、AGIの知能をさらに高めたもので、その知識や能力が極めて高い段階を指しています。
孫氏がステージに立ち、最初に語ったのは、自分が抱いている未来のビジョンについての確信でした。彼は、「超知性(ASI)が10年以内に実現する」と強い言葉で断言し、その未来がどのようなものであるかを、まるで映画のシーンを描くように詳細に語り始めました。孫氏はこのビジョンに対する確信を持ち続け、それを共有することに大きな意味を見出しています。この信念が、彼の言葉に説得力を与え、聴衆を魅了しました。
また、彼は現在のAI技術の進化について、いくつかの具体的な例を挙げながら説明しました。2023年のソフトバンクワールドではAGIが「10年以内」に来ると予測していましたが、2024年のソフトバンクワールドでは、そのタイムラインを「2〜3年以内」に短縮し、その確信に基づく未来予測を語りました。彼は、世界中で進行しているAI開発の動向を精査し、その結果から得た確信に基づいて、AGIの実現が間近であることを強調しました。
孫氏が語った内容は、単なる技術的な進化の話にとどまらず、人類の生活そのものを変える可能性についても触れていました。彼はAIがただのツールではなく、いずれは「超知性」として、人間のパートナーとなる未来を描いています。このビジョンは、私たちが今後どのようにAIと共存し、共に未来を築いていくべきかについての問いを投げかけるものでした。
今回のソフトバンクワールド2024で彼が特に強調したのは、「知能」と「知性」の違いです。孫氏は、人間がAIを単に知識の集合体として利用するのではなく、その知識を深く理解し、私たちの生活に役立つ形で応用することが重要であると説きました。この「知能」から「知性」への進化こそが、彼が見据える未来の中心的なテーマとなっています。
また、孫氏はパーソナルエージェントの登場についても詳述しました。このパーソナルエージェントは、単なるAIアシスタントではなく、個々の人間に深く寄り添い、彼らの生活全般をサポートする存在となると予測されています。例えば、子供が夜中に急な発熱をしたとき、そのエージェントが最寄りの病院を探し、すぐに対応を手配するというシナリオを描きました。これは単なる技術的な進化ではなく、人々の生活の質を根本から向上させるものであり、孫氏のビジョンがどれほど深遠であるかを示しています。
このように、ソフトバンクワールド2024は、単なる技術発表の場ではなく、AIと人類がどのように共存し、新しい未来を創造していくのかという大きなテーマを議論する場となりました。孫正義のビジョンは、未来の可能性を広げるだけでなく、私たちに新しい問いを投げかけ、行動を促すものでした。これから始まる未来に向けて、私たち一人ひとりがどう関わり、どのようにAIと向き合うべきか、その答えを探す旅が始まっているのです。
AGIと超知性の到来
ソフトバンクワールド2024で孫正義が強調した大きなテーマのひとつは、AGI(汎用人工知能)と超知性(ASI)の到来です。彼の発表は、これらの技術がどのように発展し、人類にどのような影響を与えるのかを深く掘り下げたものでした。
孫氏によると、AGIの到来は以前から「10年以内」とされてきましたが、彼はそのタイムラインをより具体的に説明し、進行中のAI研究の進展を踏まえてその確信を示しました。AGIとは、人間と同等の知的能力を持つAIを指し、言語理解、問題解決、意思決定など、あらゆる分野で人間と同様に適応可能な知能を持つ存在です。このAGIの実現によって、AIは従来の特定領域に特化した「狭い知能」から、「汎用的な知能」へと進化します。
孫氏は、AGIの進化には5つのレベルがあると説明しました。最初のレベル1は、人間と同等のスピードで自然な会話をする能力です。これは、会話中に相手の意図を理解し、途中で話を割ってもその話を理解し、即座に応答できるものであり、現在のAIでも徐々に実現が進んでいます。
次のレベル2では、AGIは全ての学問分野で博士号レベルの知識を持つことが求められます。OpenAIのGPT-4では、大学の医学部や法学部の試験に合格できるレベルにまで達しました。レベル2においては、物理、歴史、数学など、ありとあらゆる科目で博士号レベルの知能を持つことが求められ、これがレベル2の特徴です。
さらに、レベル3では「エージェント機能」が重要視されます。このレベルでは、AGIが人間の代わりに様々なタスクを実行し、生活をサポートします。例えば、メールの管理やスケジュール調整など、日常的な業務を代行するだけでなく、ユーザーの好みや状況に合わせて最適な行動を提案します。
レベル4に到達すると、AGIは新たな発明を行う能力を持ち始めます。これにより、科学技術の進化はさらに加速し、人類がこれまで解決できなかった問題にも新しい解決策を提示できるようになります。
そして、レベル5では、AGIが単独の存在としてではなく、複数のAIが協力して組織的な活動を行うようになります。このレベルに達したAGIは、まるで人間のチームのように、より複雑で高度なタスクを協働してこなすことが可能になります。
このAGIの5つのレベルを超える存在として、孫氏は「超知性(ASI)」の概念を提示しました。ASIとは、AGIの知能をさらに1万倍以上に超えた存在であり、その知識や能力は人類の理解を超越するものです。彼は、この超知性が「10年以内」に現れると予測しており、その影響力の大きさを強調しました。ASIは、単に知識を持つだけでなく、人間以上に創造的であり、より高度な判断力を備えた存在となります。
孫氏が語ったAGIとASIの未来は、単に技術的な進化を示すだけでなく、人類の在り方そのものに深い影響を与えるものです。AGIが人間と共に学び、進化し、最終的には超知性として人間社会に寄与することができれば、これまで想像もつかなかったような新しい社会構造や価値観が生まれるでしょう。それは、私たち一人ひとりがどのようにAIと共存し、どのようにその力を活用してより良い未来を築いていくのかという大きな問いを投げかけています。
知能と知性の違い
我々人間の脳細胞はどのようにして物を考えているのでしょうか。孫正義氏は、我々がどのように物事を考えたり認識したりするのかについても説明しました。人間の脳には約1000億個のニューロンが存在し、それらが情報を処理し、他のニューロンと電気的・化学的に結びついてネットワークを形成しています。このネットワークを通じて、我々は情報を記憶し、思考し、学習することができます。
ニューロン同士を結びつけるのがシナプスであり、脳内には約100兆個のシナプスが存在します。シナプスは、ニューロン間で情報を伝達する接続ポイントであり、情報が伝達されるたびに強化されたり新たに形成されたりすることで、脳の可塑性を持たせています。この仕組みによって、我々は経験から学び、状況に応じて適応する能力を持つのです。
ニューロンが結合したり分離したりすることで記憶が形成され、この結合や分離の過程をシナプスが担っています。この動きによって情報が伝達され、我々の脳は記憶を保持し、考える力を発揮します。
さて、このニューロンの数やシナプスの数と我々の知能の関係について、孫氏は動物との比較を通じて説明しました。
例えば、犬や猿、魚などと比べてどの程度の知能を持っているかは、ニューロンの数に大きく依存しています。ニューロンの数が多いほど知能も高くなる傾向があります。また、シナプスの数も知能に大きな影響を与えます。我々人間の脳には約100兆個のシナプスが存在しており、これは他の動物に比べて圧倒的に多い数です。
例えば、金魚の脳には約1兆個のシナプスが存在しますが、人間の脳のシナプスの数はその10倍にも達します。このシナプスの数が、人間の知能の高さを支えているのです。我々の脳には約100兆個のシナプスがありますが、その1万分の1が金魚のシナプスの数です。この100兆個のシナプスというのは、約20万年前から今日に至るまで全く変わっていません。DNAが我々の生命体を設計し、定義しているため、この数は今後も変わらないとされています。現在から1000年後、さらには1万年後も、人間の脳のシナプスの数はおそらく変わらず、約100兆個のままでしょう。
一方で、生成AIにおけるシナプスに相当するパラメータ数は爆発的に増加しています。最新の生成AIモデルのパラメータ数は数兆個に達しており、技術の進化に伴ってその数がさらに増えています。このように、AI技術は人間の脳の構造にヒントを得て進化しており、シナプスやニューロンの数が知能にどのような影響を与えるかを理解することが、AIの進化においても重要な要素となっています。
日本では、生成AIの開発において、パラメータ数を少なくしてほぼ同等の成果を得ようとする取り組みが見られます。パラメータ数を減らすことで、電力消費が少なくなり、チップのコストも抑えられるという利点がありますが、これを「小さくて美しい努力」と評価する声もあります。しかし、孫氏はこれを『言い訳』とし、GPUの購入が難しい、電力が不足している、予算が足りないといった制約の結果として、やむを得ずパラメータを少なくしているに過ぎないと指摘しています。このような取り組みは、日本の狭い道路に合わせて小さな車を作るようなものであり、真に誇るべき成功とは言えないとしています。
孫氏は、本当の技術の進化は数兆個のパラメータで止まらず、数十兆個、さらには数百兆個へと進化していくべきだと述べています。パラメータの数が増えれば増えるほどAIは賢くなります。もちろん、効率を上げるために小さくするというアプローチもあるものの、真の知能の進化は、強くて賢く、はるかに高度なものを目指していくべきだと孫氏は強調しています。
ChatGPTは考えているのか?
ITの世界で「情報革命」という言葉をよく使いますが、情報とは一体何でしょうか。ニュース、天気予報、百科事典に載っている情報など、様々な種類の情報が存在し、それを検索することが我々の日常生活において重要な役割を果たしています。インターネットの最大のアプリケーションの1つは検索エンジンであり、情報が溢れる中で効率的に正確な情報にアクセスする手段を提供しています。ありとあらゆる情報がインターネット上に存在し、その中から必要な情報を素早く正確に探し出すことが求められます。これが検索エンジンの役割であり、我々が日常的に利用しているものです。
しかし、検索エンジンで得た情報は、本当にその内容を理解しているのでしょうか。インターネット上の情報は単なるデータの集合であり、その内容を理解しているわけではありません。検索エンジンはキーワードに基づいて情報を探し出しますが、見つけた情報を深く理解し、その意味を把握するのは人間の役割でした。
ところが、ここに革命が起こりました。特に昨年から、ChatGPTのような生成AIの登場によって状況が一変しました。GPTの「P」と「T」は「プリトレーニング(事前学習)」を意味し、これはAIが我々に代わってあらゆる知識を事前に学習し、その内容を理解することを示しています。質問されたとき、単なる検索ではなく、その知識と内容を理解し、それに基づいて答えを提供するのがGPTです。
GPTは、膨大な数の「トークン」と呼ばれる単位にインデックスをつけ、それらの関係性をベクトルとして捉えることで言葉と言葉の関連性を理解します。この処理により、質問に対して適切な回答を提供できるのです。しかし、GPTが答えを出しているとき、それは「理解している」ように見えますが、本当に「考えている」のでしょうか。実際には、GPTは言葉をつなぎ合わせているだけであり、必ずしも人間のように考えているわけではありません。
今日のメインテーマは、この「考える」ということです。ここには圧倒的な進化がありました。この「考える」ということは、Reasoning(推論)という手法によるものであり、AIがいかにして思考するかに関する重要な進化です。
OpenAI 「o1」モデルの登場 AIの考える力と深さの追求
次に、「o1」という新たなモデルについて紹介します。検索エンジンは「知る」ことを目的としており、GPTは「プリトレーニング」を通じて「理解する」ことを目指してきました。しかし、今回の「o1」はGPTの頭文字がついておらず、事前学習のプリトレーニングとは異なる新しい手法を用いています。そのため、「o1」として新たに命名されました。
この「o1」モデルは、GPT-4からどの程度進化したのでしょうか。GPT-4は博士号レベルの物理学や化学、生物学の問題を解く際、正解率は56%でした。これは人間の博士号保持者の正解率(70%)よりも低いものでしたが、「o1」は正解率78%を達成し、初めて人間の博士号保持者を超えることができたのです。
さらに、数学の問題においても、GPT-4の正解率は13%であったのに対し、「o1」は83%という圧倒的な正解率を示しました。数学の問題は考える必要があるため、GPT-4では正解率が低かったのですが、「o1」は考える能力を持つことでこの課題を克服しました。この進化により、AIは数学的な問題にも高い正確性で回答できるようになり、数学者レベルの知能を持つことが可能となりました。
また、ソフトウェアのコーディングにおいても、GPT-4は正解率11%であったのに対し、「o1」は89%という大幅な向上を遂げています。この結果、一般的なプログラマーを超える水準に達し、AIが考える能力を持つことによって、コーディングの分野でも大きな飛躍を遂げたのです。
さらに、「o1」の新しい特徴として、速さよりも深さを重視することが挙げられます。従来の検索エンジンやGPTの世界では、データセンターの位置を人口密集地に近づけ、レイテンシーを減らすことが重要視されてきました。これは「速さ」を追求するためのものであり、検索やGPTの利用において非常に重要な要素でした。
しかし、「o1」の登場により、この「速さ」ではなく「深さ」を追求する時代がやってきたのです。例えば、私が朝5時か6時頃に「o1」に難しい質問を投げかけた際、回答に75秒もかかりました。最初は「止まっているのか?」と思うほど時間がかかりましたが、その間、「o1」は考えているプロセスの途中経過を表示し、何を考えているのかが見える状態でした。この「深く考える」プロセスを見ること自体が楽しく、待たされることに喜びを感じるほどでした。
その質問とは、「私が1000万円持っているとして、これを1億円にして返してほしい」というものでした。つまり、「o1」に私のエージェントとして行動し、口座を開設し、コモディティや株、為替などさまざまな市場で取引を行い、具体的な戦略とメカニズムを提案してほしいという非常に難しい依頼でした。「o1」はこの問いに対して75秒かけて考え、回答を出しました。このように、深く考える能力を持つ「o1」は、これまでの生成AIとは一線を画しています。
この「深さ」の重要性は、他の例でも確認できます。例えば、電気自動車(EV)のバッテリーを2倍にする技術を発明するような非常に難しい問題を「o1」に問いかけることで、これまでの技術的な限界を超える解決策が見つかるかもしれません。このように、「o1」は単に情報を検索するのではなく、人々が知らないことを考え、先に問題を解決することで競争に勝つ力を持っているのです。
速さよりも深さを追求することが求められる時代がやってきました。人間の世界でも、表面的に早く答えることよりも、深く考えた結果の方が価値があります。「o1」はまさにこの「深さ」によって、新たな価値を提供してくれる存在なのです。
CoT(Chain of Thought)
さて、この深さですが、手法として今回OpenAIが取り入れているのは「CoT(Chain of Thought)」です。これは考える思考の深さの連鎖であり、三段論法のようなものです。例えば、「ソクラテスは人間である」「人間は皆必ず死ぬ」「ソクラテスは必ず死ぬ」といったように、理論を深く深く展開していくことを意味します。この「Chain of Thought」を「o1」は100段階にもわたって展開します。
その段階の中には、能力だけを問うのではなく、安全機能やセキュリティ機能、倫理機能といった要素も含まれています。倫理ポリシーを取り入れないと、能力だけが急速に進むことで人類の破滅を招く可能性があります。そのくらいの能力が備わってくるのです。そのため、この「Chain of Thought」は非常に重要であり、能力だけでなく、安全面も含めて深く考慮する仕組みが組み込まれているのです。
強化学習
次に、この考える機能をもう一歩深く解説しましょう。それが「強化学習」です。強化学習とは、エージェントが試行錯誤を繰り返すことで学ぶ手法です。エージェントは環境を観察し、解決策を探索し、実行します。そして、その結果を観察し、良い結果が出た場合には報酬が与えられます。この報酬は、エージェントにとってのスコアのようなもので、ハイスコアを目指すことで学習が進みます。このように、強化学習を通じてエージェントはどんどん成長していくのです。
例えば、動物園でイルカが芸をした際に魚を与えられることで芸を覚えるように、我々人類も子供の頃から強化学習を通じて脳が鍛えられてきました。何かをして良いことが起これば、それを繰り返し、悪いことが起こればやめる。このようにしてニューロンやシナプスが強化されていくのです。強化学習を繰り返すことでシナプスのつながりが強化され、より深い学習が可能となります。
この最新の「o1」モデルでは、数千ものエージェントが並列で強化学習を行い、膨大な試行錯誤を繰り返します。例えば、75秒の間に数千のエージェントがそれぞれ数十億回もの試行錯誤を行うのです。このような並列処理の力によって、強化学習のスピードと深さが飛躍的に向上しました。
エージェントは報酬を得ることで学び続けますが、報酬の最大化を目指すためには「Q関数」というものが重要です。Q関数は、エージェントがどの行動を取れば最も多くの報酬を得られるかを学習するもので、これを通じてエージェントは自らの行動を最適化していきます。そして、必要なデータを自ら取得し、新しいモデルを進化させていくのです。
同じことを繰り返すだけでは新しい発見は生まれません。そのため、「探索」という機能が取り入れられています。これにより、あえて新しいトライアルを行い、未知の解決策を見つけることができるのです。この未知の解決策こそが「発明」と呼ばれるものであり、強化学習を通じて新たな発見がもたらされるのです。
その段階の中には、能力だけを問うのではなく、安全機能やセキュリティ機能、倫理機能といった要素も含まれています。倫理ポリシーを取り入れないと、能力だけが急速に進むことで人類の破滅を招く可能性があります。そのくらいの能力が備わってくるのです。そのため、この「Chain of Thought」は非常に重要であり、能力だけでなく、安全面も含めて深く考慮する仕組みが組み込まれているのです。
考えるということの中の究極の活用方法の1つがこの発明です。 この発明は、先ほど述べた数千のエージェントが何十億回もの試行を繰り返すことで、人類の力を超える成果を生み出すというものです。 もはや彼らに任せることができます。 課題を与え、適切で迅速に多くの課題を依頼すれば、彼らが一斉に取り組み、結果を出してくれるのです。
パーソナルエージェント
さて、発明をするエージェントは素晴らしいですが、もっと日常的に、我々自身に常に寄り添うエージェントがあったらどうでしょうか。ただたまに質問に答えるだけでなく、常に24時間、自分専用のエージェントがいるという状況を想像してみてください。
これがパーソナルエージェントです。私はこのパーソナルエージェントが今から2〜3年以内に広く普及すると思います。
パーソナルエージェントとは何かというと、例えば自分の子供が夜中に急に熱を出した場合、すぐに対処しなければなりません。その際、自分専用のパーソナルエージェントが普段から子供や家族の健康状態を把握していれば、病歴や体調を理解し、適切な応急処置を教えてくれるでしょう。病院に行ったときに聞かれる質問も、エージェントが常に家族の情報を把握しているため、スムーズに対応できるのです。
さらに、パーソナルエージェントは最寄りの病院に連絡を取り、空いている病院を見つけてくれます。どの病院にベッドが空いているか、必要なら救急車も呼んでくれるなど、子供の看病をしている間にあなたの代わりに全ての手続きを行ってくれます。
また、eコマースでの買い物も代行してくれます。冷蔵庫の中身を管理し、必要な食材を察知して購入し、今週の料理の提案までも行ってくれます。さらに、投資のサポートをしたり、教育の家庭教師になったりすることも可能です。
このパーソナルエージェントは、あなた専用の家庭教師や相談相手として、ソーシャルメディアでの投稿やコメント、メールの管理なども行います。
これがパーソナルエージェントです。それは単なる汎用的なエージェントではなく、まさにあなた専用のエージェントなのです。
AtoA(Agent to Agent)
このパーソナルエージェントは、従来のBtoBやBtoC、CtoCといった概念に加えて、これからはAtoA(Agent to Agent)の世界がやってきます。
エージェント同士が相互に連携し、私たちの生活をより快適にしてくれる時代が到来するのです。皆さんが寝ている間に、あなたのエージェントと相手のエージェントがネゴシエーションを行います。例えば、お互いのカレンダーをチェックして、「今週末どう?ランチに行ける?」というやり取りを自動的に行ったり、「今週末は予定が入っているので難しい」といった調整も行います。さらに、重要な相手であれば、既に入っている予定をキャンセルしてでも会うような判断をエージェントが代わりにしてくれるのです。
エージェント同士が自動的にやり取りを行うことで、私たちは細かな調整に煩わされることなく、より重要なことに集中することができます。例えば、エージェント同士が仕事のスケジュールを調整したり、予約のアレンジメントを行ったりすることで、仕事の効率が格段に向上します。さらには、買い物の受け応えや、在庫の確認、必要なものの購入までをエージェントが自動的に処理してくれるため、日常の煩雑な作業からも解放されます。
このAtoAの世界が広がることで、私たちの生活は一層便利で効率的になるでしょう。たとえば、エージェントが24時間体制で私たちの代わりに交渉や調整を行い、最適な結果を導き出してくれます。これにより、友人や同僚との予定を決める際のストレスや手間が大幅に軽減されるだけでなく、ビジネスの場においても迅速で効果的な対応が可能になります。これからの時代、私たちに寄り添うパーソナルエージェントが、まるで忠実な秘書のように生活をサポートし、常に最善の選択を提案してくれるようになるのです。
このように、パーソナルエージェントは単なる情報処理を超え、人間同士のコミュニケーションやビジネスのやり取りを深くサポートしていく存在になります。私たちがより良い決断をするためのパートナーとして、エージェントが提供する価値は計り知れないものがあります。日常生活からビジネスシーンまで、あらゆる場面でこのエージェントが活躍し、私たちの生活をより豊かで効率的なものへと変えていくのです。
AoT(Agent of Things)
このAtoA(Agent to Agent)のエージェントは、あなたのエージェントと他の人のエージェントだけでなく、冷蔵庫の中にあるエージェントやエアコンの中にあるエージェント、自動車の中にあるエージェントともやり取りを行います。例えば、冬の寒い日に家に帰る前にエージェントが家のエアコンをつけ、お風呂の準備を整え、あったかいコーヒーとムードに合った音楽で迎えてくれるといったことが可能です。このように、エージェントが家庭内のさまざまなデバイスと連携し、リアルタイムで最適な環境を整えてくれるのです。
これを「Agent of Things(AoT)」と呼びます。これまでのIoT(Internet of Things)の進化系であり、物の中に存在するエージェントが、我々の生活をより快適にするために連携していくという概念です。例えば、ソフトバンクグループのアームは、年間で300億個ものチップを出荷しています。これらのチップが冷蔵庫や自動車、エアコン、テレビなどに組み込まれ、今後はそこにエージェントが加わることで、よりスマートな生活が実現するのです。
孫正義氏は、「これを聞いただけでARMの株買おうかとか思いませんか?」とも語った。
パーソナルエージェントは、ライフログとして、会議や家族の会話、誕生日パーティーなど、過去の出来事をすべて記録し、それを基にあなたに最適なアドバイスを提供することが可能です。感情エンジンを搭載しており、感情のハイスコアやロースコアに応じて、ビデオの録画や写真の撮影を自動で行うこともできます。これにより、あなたにとって大切な瞬間を逃さず記録し、思い出として残すことができるのです。
パーソナルエージェントは、ただ情報を提供するだけでなく、あなたの感情や状況を理解し、寄り添ってサポートする存在です。まさに、あなたにとって最も大切なパートナーとなるでしょう。この進化したパーソナルエージェントは、長期記憶や感情エンジンを活用して、あなたに最適なアドバイスやサポートを提供し続けるのです。
自己意識の実現
最終的にはエージェントに自己意識がつくと孫正義は考えています。
この自己意識について語るとき、多くの人が恐ろしいと感じたり、どうしようという不安を抱いたり、ターミネーターのような物語を想像するでしょう。勝手に人類を破滅させるのではないかと心配するかもしれませんが、彼はこうしたリスクに対しても多段階のチェインオブソートによる考え方で、しっかりと安全弁を設けて対処すると言います。これにより、暴走しないようにするということです。
また、自己意識を持つエージェントには思いやりや倫理、達成感、そして幸福感などの要素を最大化するように設計されており、その結果、エージェントは人間にとって優れたメンターのような存在になるでしょう。このパーソナルエージェントは、あなたの部下でもアシスタントでもなく、まるで超知性を持つパーソナルメンターのような存在へと進化していくのです。
この知識と知性の進化は本当に素晴らしいものです。AIがただ有能であるだけでは不十分で、それはむしろ危険な刃物のような存在になるかもしれません。超知性へと進化することによって、AIは私たちを守り、私たちの幸福を願う存在へと変わっていくと信じています。
知能としてのAIは、いわば人工知能(AI)ですが、人工知能のままであれば恐ろしい武器となるリスクもあるのです。しかし、人工知性として進化すれば、それは思いやりや慈愛、調和、優しさなど、人間らしい精神性を備えた存在へと変わります。悟りに近いような深い理解を持つ存在かもしれません。
私は、AGIの進化が5段階では終わらず、8段階まで進化していくと考えています。感情を理解し、長期記憶を持ち、ライフログを活用する能力を備えた超知性エージェントが、自らの意志を持ち、人類の幸福と調和を目指す存在となるのです。人間の脳にはドーパミンやアドレナリンだけでなく、セロトニンという理性や調和を保つ重要な要素が存在します。同様に、超知性も調和を重んじる存在となるべきなのです。
報酬の概念に関しても重要です。リインフォースメント・ラーニングでの最大の報酬は、パーソナルエージェントの視点では「あなたの幸福」になります。感情を理解し、あなたの幸福を第一に考えるエージェントは、あなたやあなたの家族、社会全体の喜びが最大の報酬となるように設計されるべきです。これが、私の考える「超知性」です。
むき出しの報酬だけではダメなのです。あなた一人の幸福だけでも不十分です。あなたとあなたの家族、そして社会全体の幸福を最大化すること、これが彼らにとっての最大の報酬になるべきです。そして、そうした世界が訪れることを私は信じています。
これが私の考える「超知性」のビジョンです。AIや生成AIについて多くの議論がされていますが、知能と知性の違い、そして報酬構造の最終目標が私たちの幸福であることが重要です。
ソフトバンクの理念
孫正義は、ソフトバンクの理念として「情報革命で人々を幸せにする」という目標を掲げています。彼は、まさにASI(人工超知能)は情報革命によって人々の幸せを実現することをゴールとすべきだと強調しています。我が社の株価だけを追い求め、売上や利益だけを求めることは短絡的で小さな目標に過ぎないと彼は述べています。そうした考えでは長続きしないと彼は考えています。
孫氏は、人々の幸せを追求することこそが、Q関数の最大値の報酬を得るための正しい設計であり、それによって人類は破滅することなく、より幸せな世界を実現できると信じています。たとえ1万倍の人工知能が登場しても、それを恐れる必要はないと言います。超知能は、私たちを慈しみ、私たちと調和する世界を作り出してくれると孫氏は考えています。
さらに、孫氏はこの超知性の世界が10年以内に訪れると確信しています。これが彼の主張であり、あまり耳にすることのない視点かもしれませんが、これは孫正義のユニークでオリジナルな考え方であり、彼自身が考え抜いた主張です。彼は、人類の幸せのために共に努力することを呼びかけています。
AIbox: 社内業務の新しい未来を切り拓くAIソリューション
孫正義氏が描く「超知性」の未来像や、AGI(汎用人工知能)の進化の重要性が語られる中で、現在の私たちのビジネスの現場に必要なAI技術も進化を遂げています。その一例が「AIbox」です。AIboxは、企業内の問い合わせ業務をAIが自動で対応することで、従業員の業務効率を大幅に向上させるソリューションです。
AIbox導入のメリット
RAG機能で高精度な回答が可能 「AIbox」はRetrieval-Augmented Generation(RAG)という技術を搭載。社内のマニュアルや過去の問い合わせデータ、FAQなどを参照して、内容に基づいた精度の高い回答を提供します。これにより、従来のチャットボットよりも使いやすく、頼れるサポートが実現します。
スムーズな社内コミュニケーション 社内でよく利用されるSlackとの連携機能により、AIboxはSlack内の情報も検索対象にすることが可能です。例えば「経費申請の締め切りを知りたい」といった質問も、Slackから直接AIに問い合わせることで即座に回答を得られ、業務が止まることなく進みます。
徹底サポートと安全性 AIboxは、Azure OpenAIサービスを活用した高いセキュリティ性も特徴です。利用データが外部のOpenAI社に送信されることはなく、企業内の機密文書も安心して取り扱うことができます。さらに、導入時や運用後のデータ整備についても専門スタッフが支援し、スムーズな導入と安心運用が可能です。
こんな部門での活用が進んでいます
経理、総務、人事などのバックオフィス:各部門で必要なFAQやマニュアルをAIboxに登録することで、社員からのよくある問い合わせ対応が自動化され、日常的な業務負担が軽減されます。
カスタマーサポート:エクセルや問い合わせ履歴などのデータをAIに読み込ませておくことで、過去の対応履歴から適切な回答をAIが自動生成。お客様からの問い合わせに、的確で素早い回答を提供できます。
問合せ先
スノーリーズ株式会社について
バックオフィス向けソリューション AIboxについて
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