企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進において、AIの導入は避けて通れない道です。
しかし、機密情報を含む社内データをAIに学習させる際のデータセキュリティに対する懸念は、企業にとって大きな課題となっています。
本記事では、Azure OpenAI Serviceを安心して導入するためのデータセキュリティ対策について詳述し、その技術的根拠を解説します。また、成功事例や具体的な導入ステップについても触れていきます。
(更新:2024/09/08)
Azure OpenAI Serviceのデータセキュリティ対策
Azure Blob Storage: 機密情報を含む社内文書データの保存と管理におけるセキュリティ対策
暗号化Azure Blob Storageでは、保存されるデータはすべて自動的に暗号化されます。マイクロソフトの強力な暗号化アルゴリズムを使用しており、不正アクセスからデータを守ります。
アクセス制御アクセス制御リスト(ACL)を使用することで、データへのアクセス権限を細かく設定できます。Azure Active Directory(AAD)と連携することで、企業内のユーザー管理も一元化され、セキュリティポリシーの統一が可能となります。
データ冗長性データは複数の地理的に分散したデータセンターに冗長化されて保存されます。RA-GRS(Read-Access Geo-Redundant Storage)オプションを利用することで、異なるリージョン間でのデータ複製が行われ、災害時にもデータアクセスが保証されます。
Azure AI Search: 検索データのセキュリティ対策
アクセス制御Azure AI Searchでは、インデックスに対するアクセス制御を厳格に設定できます。検索APIキーの利用とAzure Active Directoryの統合により、セキュリティが強化されます。
データ暗号化インデックスデータは、保存時および転送時に暗号化されます。TLS(Transport Layer Security)による通信の暗号化が標準で実装されており、データの保護が徹底されています。
Cosmos DB: データベース管理のセキュリティ対策
データ暗号化Cosmos DBでは、データベース内のすべてのデータが自動的に暗号化されます。さらに、マネージドサービスエンベロープキーとカスタマーマネージドキーの両方をサポートしており、企業のセキュリティ要件に柔軟に対応します。
アクセス制御Cosmos DBは、ロールベースのアクセス制御(RBAC)を提供しており、ユーザーごとに異なるアクセス権限を設定できます。Azure Active Directory(AAD)と統合することで、認証とアクセス管理の一元化が図られます。
地理的冗長性Cosmos DBは、データを複数のリージョンに分散して保存するため、自然災害やシステム障害に対する耐性を持っています。複数のレプリカセットを使用したデータ分散戦略により、データの一貫性と可用性が確保されます。
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データプライバシーとセキュリティ
データの所有権と制御
企業がAzure OpenAI Serviceを使用して処理する機密情報を含む社内文書学習データは、すべて企業自身が所有し、管理します。データは企業のAzureアカウント内で処理され、OpenAI社には送信されません。
データの利用範囲
Azure OpenAI Serviceは、提供されたデータを特定のリクエストに対してのみ使用します。データは一時的に処理され、永続的に保存されることはありません。
参考
暗号化
すべてのデータは、転送時と保存時に暗号化されます。TLS(Transport Layer Security)を使用した暗号化により、ネットワーク経由でのデータ送信時にも高いセキュリティが維持されます。
データの削除
処理が終了したデータは、システムから完全に削除されます。企業はデータのライフサイクル全体を通じて、データがどのように扱われるかを制御できます。
Azure OpenAIに機密情報を含む社内文書を学習利用する際の安心ポイント
データの管理: データは企業のAzure環境内に留まり、企業自身がデータの管理とアクセスを制御します。
セキュリティ認証: Azureは、ISO/IEC 27001、SOC 1、SOC 2などの国際的なセキュリティ認証を取得しており、高いセキュリティ基準を満たしています。
コンプライアンス: Azureは、多くの国際的および産業特有のコンプライアンス基準を遵守しており、企業のデータプライバシー要件を満たします。
技術的根拠
これらのセキュリティ対策がどのように機能し、データ流出のリスクを低減するかについて具体的に説明します。
暗号化の重要性データ暗号化は、不正アクセスやデータ漏洩から保護するための基本的な手段です。Azureのサービスでは、データは保存時(静止時)および転送時(動作中)に暗号化されます。
アクセス制御の効果厳格なアクセス制御は、内部および外部の脅威からデータを守るために不可欠です。ACLやRBAC、Azure ADを利用することで、データにアクセスできるユーザーやサービスを限定し、不正なアクセスを防止します。
データ冗長性の役割データ冗長性は、データの可用性と耐障害性を確保するための重要な要素です。Azureのデータ冗長性機能により、データは複数の地理的に分散した場所に保存され、災害やシステム障害が発生してもデータが失われるリスクを大幅に減少させます。
導入の成功事例
多くの企業がAzure OpenAI Serviceの導入によって業務効率を向上させています。
例えば、トヨタ自動車では、Azure OpenAI Serviceを活用した社内問い合わせ対応システムを導入し、問い合わせ対応の迅速化と正確性の向上を実現しました。
このシステムでは、Azure Blob Storageに保存された技術マニュアルやFAQデータの機密情報を基に、AIが自動的に最適な回答を提供します。
また、金融業界でもAzure OpenAI Serviceの活用が進んでいます。
三菱UFJ銀行では、顧客問い合わせ対応にAIを導入し、顧客満足度の向上を図っています。このシステムでは、Cosmos DBに保存された顧客データをリアルタイムで参照し、個別化された回答を提供します。
具体的な導入ステップ
要件定義まず、AI導入の目的と要件を明確にします。どの業務プロセスを自動化するか、どのようなデータを使用するかを決定します。
データ準備必要なデータをAzure Blob StorageやCosmos DBにアップロードします。この際、データのサニタイズやクレンジングを行い、セキュリティポリシーに従ってデータを整理します。
AIモデルの構築Azure OpenAI Serviceを利用して、指定されたデータに基づくAIモデルを構築します。RAG機能を活用し、データの参照と生成を組み合わせた高精度な回答モデルを作成します。
セキュリティ設定データ暗号化とアクセス制御の設定を行います。ACLやRBACを使用して、データアクセスの権限を厳格に管理します。
テストと検証システムの動作をテストし、精度やパフォーマンスを検証します。必要に応じて、AIモデルやセキュリティ設定を調整します。
運用開始システムを本番環境に導入し、運用を開始します。運用中も定期的にデータとモデルの監視・更新を行い、精度とセキュリティを維持します。
まとめ
Azure OpenAI Serviceを活用することで、企業は生産性向上、コスト削減、競争優位性の確保を実現できます。しかし、データセキュリティに対する懸念を払拭するためには、適切なセキュリティ対策を講じることが重要です。
Azure Blob Storage、Azure AI Search、Cosmos DBのセキュリティ機能を活用し、データの暗号化やアクセス制御、データ冗長性を確保することで、安全に機密情報を含む社内データをAIに学習させることができます。
具体的なアクションプランを実行し、AI導入をスムーズに進めるためのステップを踏んでいきましょう。データセキュリティを確保しながら、AIの力を最大限に活用して、未来の働き方改革を進めていきましょう。
参考
スノーリーズ株式会社のAIboxを導入することで、AIを使ったノウハウ蓄積と引き出しを効率的に行い、業務効率向上に寄与することが可能です。
AIboxは、バックエンドにAzure OpenAI Serviceを使用しているので本記事に記載の通り、機密情報を含む社内文書の取り込みに安心してご利用いただけます。
無料トライアルからお試しいただくことも可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
問合せ先
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